最近、「トレイルランとロードランが融合する」という文脈の記事を見かけることがある。(※競争激化のロードラン市場にザ・ノース・フェイス、サロモンが本格参入 トレランカルチャーで差別化)
自分が読んだのは、「競争激化のロードラン市場にザ・ノース・フェイス、サロモンが本格参入 トレランカルチャーで差別化」という内容の記事だった。
要するに、ランニングシューズの“速さ競争”に、トレイル界からも参画してくる、という流れだ。
ただ、正直に言うと、そこには少し違和感がある。
トレイルランをやっている人を見ていると、長い距離を走る人は多いけれど、「とにかく速く走りたい」というタイプはそこまで多くない印象がある。
それよりも、
・自分の足に合っているか
・最後まで持つか
・安心して走れるか
といった点を重視している人のほうが多いように感じる。
少なくとも、自分の周りでは「どれだけスピードが出るか」よりも、「どれだけ無理なく走れるか」が優先されている。
サロモンはトレイルでも街でも見る
その感覚を強めたのが、シューズの見え方だ。
サロモンのシューズは、トレイルでも見かけるし、街で履いている人もかなり増えた。
「走るための靴」というより、「走れて、街でも履ける靴」になってきている印象がある。
ファッションの面だけを見れば、たしかに“融合”は進んでいるように見える。
以前のサロモンは、雪山用のシューズやトレラン用のシューズという印象が強く、街で履くものではなかった。
それが今では、普通に街履きとして使われているのをよく見かける。
そういう意味では、トレイルとロードの融合は、少なくとも見た目や使われ方のレベルでは、かなり進んでいるのだと思う。
カーボンシューズは増えたが、選ばれているのは別の靴
たしかに、トレイルラン用シューズの世界にもカーボンプレート入りのモデルが出てきて、トップ選手が履いているという話も聞く。
ロードの“速さ競争”の文脈が、トレイル側にも入り込んできているのは事実だと思うし、個人的にも興味はある。
ただ、それでも実際に自分が選んでしまうのは、いつもの馴染みのシューズだったりする。
周りを見ても、最先端のモデルより、アシックスのトレランシューズの中でも、比較的コスパのいいモデルを履いている人のほうが多い印象がある。
理由は単純で、「速くなるかどうか」よりも、
・安心して履けるか
・どんな路面でも対応できるか
・価格に対して納得できるか
といった点のほうが、優先されているからだと思う。
トレイルの走り方と、シューズに求められるもの
トレイルでは、地面を思いきり蹴るというより、「足を置いていく」ような走りになる場面が多い。
そうなると、反発力や推進力よりも、安定感やクッション性のほうが重要になる。
ロードのように「スピードを出すための進化」が、そのまま歓迎されるかというと、少し事情が違う。
トレイルの場合、速さよりも「最後まで持つこと」や「脚を守ること」のほうが価値として大きい。
だから、トレイルシューズにカーボンが入ってきたとしても、それがそのまま主流になるかというと、まだ距離があるように感じる。
少なくとも、自分の実感としては、「速くなる靴」よりも「安心できる靴」を選んでいる人のほうが多い。
HOKAが選ばれているという話
ちなみに、日本のトレイルシューズでは、いちばん履かれているのはHOKAだ、という話を聞いたことがある。
それが事実だとすれば、やはり多くの人は「速さ」よりも「安心感」を選んでいるのだと思う。
HOKAが遅い、というわけではない。
ただ、HOKAの強みは、
・推進力よりもクッション
・攻めた設計よりも安定感
・記録よりも完走
といった方向にある。
トレイルランでは、路面も一定ではないし、足の置き場も毎回変わる。
そこで求められるのは、「どれだけ速く進めるか」よりも、「どれだけ脚を守りながら進めるか」だ。
「トレンド」ではなく「売り場の拡張」
今回の記事を読んで思ったのは、これは「新しいトレンド」というよりも、
これまでトレイルを主戦場にしてきたメーカーが、ロードにも売り場を広げようとしている、
という話に近いのではないか、ということだ。
「トレイル×ロードが流行っている」というよりも、
「トレイル系ブランドが、ロードにも入ってきている」という段階。
トレンドと呼ぶには、まだ少し早い気もする。
それでも、この動きは歓迎できる
ただ、この流れ自体は、個人的にはかなり歓迎している。
トレイルを前提に作られてきたメーカーがロード向けのシューズを出せば、選択肢は確実に増える。
選択肢が増えれば、
・技術の進化は早くなる
・足に合う人の幅も広がる
これは間違いなく、ランナー側にとってプラスだ。
自分はわりと決まったメーカーのシューズを履き続けるタイプで、ずっとブルックスを選んできた。
トレンドに敏感なわけでもない。
それでも、新しいシューズが出れば、やはり履いてみたいとは思う。
それは流行に乗りたいからではなく、「どういう方向に進化しているのか」を、自分の足で確かめたいからだ。
融合しているのは「競技」ではなく「選び方」かもしれない
「トレイルとロードの融合」と聞くと、
速くなる話、競技的な進化の話のように聞こえる。
でも、実際に起きているのは、
速さを求める方向への融合、というよりも、
「どこでも走れる」
「無理なく走れる」
という価値観への寄り方なのではないか。
融合しているのは、競技としての走り方ではなく、
シューズの選び方や、走ることへの向き合い方のほうだ。
速くなるための融合ではなく、
続けるための融合。
いま起きている変化は、たぶんそっち側の話なんだと思っている。

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